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2024年3月29日金曜日
2024年3月28日木曜日
音楽 : 高橋悠治、藤枝守『「電脳カフェ」のための音楽』
高橋悠治、藤枝守『「電脳カフェ」のための音楽』[EMC-019LP] LP
現代音楽とサイバーオカルトが野合したともいえる日本の電子音楽裏歴史、『「電脳カフェ」のための音楽』(1991年)再降臨!開催時の怪しい雰囲気の再現を表象的に試みる特殊仕様でお届けします。
=LPの仕様=
+ 当時の案内フライヤー図版を再現
+ 電子機器用IC基板(本物)とオリジナル・カセットインデックスの複製をジャケットに貼り付け
+ 独D&Mでのマスタリング/45回転カッティング
+ インサート封入/解説・川崎弘二/日本語・英語掲載
+ ADテープ変換:SUGAI KEN
(※写真はモックアップ見本です)
本作は1991年9月にアールヴィヴァン(西武)運営のスペースで高橋悠治が企画したイベント「池袋電脳カフェ」のために制作された幻のカセットの復刻である(*1)。これは高橋悠治と藤枝守のマック(*2)を用いたコンピューターシステムの共演で、柴田南雄宅で櫻井卓の手により録音。高橋がマックでコントロールしたサンプリング音源と藤枝がMAXで操作した音響システムおよびFM音源(*3)が交錯するほぼ意味不明の音塊が収録された。
当時のパンフレットに高橋が寄せた言葉「日常のゆらめく時間のなかに暗い電脳空間の半透明な座標軸が陽炎のように見え隠れする」は、彼がサイバーオカルト的なものに憑かれていた可能性を示し、また、当時の取材で「来なかった人も重要。(中略)何かが起こっていたらしい、と後で知る。そのイメージから全然別のものが出てくる可能性がある」と語ったのは予言だったか!?
理性が基根をなす現代音楽と怪しい電脳オカルト的世界が交錯したのはごく短い期間であり、本作は残してはいけなかったかもしれないものを記録した裏歴史資料である。解説は日本の電子音楽の泰斗、川崎弘二。
=注釈=
*1:オリジナル題名は『Computer Café Music』。
*2:植物学者の銅金裕司によると当時のマックは「オカルト的な感じ」が漂い、価格は「軽トラ2台分」だったという (『エコロジカル・プラントロン』解説より)。
*3:後に『プラントロン』インスタレーションでも使用されるシステム。
西武が情報発信企業としての黄金期だった80s-90s初頭、西武美術館と付属のショップ《アールヴィヴァン》は、現代美術と実験音楽の交差点だった。見たこともないディスクが並び、高橋悠治は水牛楽団を、藤枝守はアメリカ純正調楽派のミニコミ『1/1』を、そしてサウンドアート黎明期の作家たちは変な音のカセットを販売していた。エム・レコードが放つ『「電脳カフェ」のための音楽』はそんなオカルト的空間で行われたオカルト的な音楽。メロディどころか始まりも終わりもない抽象的な電子音は、今ならググれば簡単に調べられる。しかし多少敏感な人たちですらそういう拠り所がない当時は、より興味深く、かつウサン臭い眼差しで接していたはずである。その「見てはならぬものを見た」トラウマが、30年経って新しい何かを生み出しているとすれば、仕掛け人たちにとっては望外の喜びだろう。 (井部治/OMEGA POINT)
TRACKS:
01. Morning [4:44]
02. Afternoon [9:38]
03. Evening [9:34]
04. Night (Remix) [4:40]
2024年3月25日月曜日
書籍 : 吉増剛造―『DOMUS X』
・限定499部(ナンバリング付)
・吉増剛造による「手書き作品」1点同梱
・吉増剛造「直筆サイン」
・付録として〈長篇詩 石狩シーツ〉朗読映像「石狩の時間の皺皺皺皺…」のDVD付ほか
*上の写真は、本書の書影、本扉、別丁扉(全てに吉増剛造直筆サイン+ナンバリング付)、本書に同梱されるDVDとCD2枚の盤面
🟣本ならざる本へ、声と光と香のゆらぐ無造作な束(タバ)!🟣
現代最高の詩人、そしてアート業界でも注目される吉増剛造。
その吉増が、2020年4月から2021年11月まで、1度も休むことなく1週間に1度制作しつづけた、詩的映像日誌「gozo's DOMUS」が、このたびコトニ社から『DOMUS X』という名の書物となって、2024年3月7日に発行されます。
「gozo's DOMUS」は、吉増剛造の最後の詩集『Voix』(思潮社)、そして渾身の究極詩論『詩とは何か』(講談社)の執筆過程と伴走するようにして制作され、この2冊の完成をもって終わりました。
日本を代表する詩人の詩的生活や、言葉を編んでいくその創作風景が織り込まれた貴重な映像を、書物にするにあたり考えだされたコンセプトは、「本ならざる本へ、声と光と香のゆらぐ無造作な束!」
この本を手にする読者は、内容もさることながら、その異様ともいえる装丁に驚かれるはずです。
現代の規格化された本のかたちへのアンチテーゼ、あるいは未生の本への挑戦とも言えるその造本は、常に型を破り続けてきた吉増剛造のこれまでの詩業そのものです。
『DOMUS X』を発売するにあたり、この本のためだけのECサイト「吉増剛造 DOMUS X 書店」を開店しました。
本書の刷り部数は499部のみ。
たとえ売り切れたとしても重版はできません。
もちろん普及版も発売できません。
【付録】
🔴吉増剛造による手書き作品、『DOMUS X』1部につき1枚
(肉筆原稿、あるいは直筆赤字入り校正刷りなどの手書き作品)
(ランダムに封入されますので、手書き作品を選択することはできません)
🔴吉増剛造直筆サイン入り別丁扉(ナンバリング入り)
🔴映像データ(DVD):"i"CITY(10分)+Oh! Mademoiselle Kinka!(5分)+Postcard Ciné(5分)+Smoky Diary(7分)+Voix Ⅰ(5分)[以上、マンチェスター国際芸術祭出品]、石狩の時間の皺皺皺皺…(45分/〈石狩シーツ〉朗読映像/映像:鈴木余位/企画:藪前知子)[札幌国際芸術祭出品]
🔴音声データ1(CD):マリリアの歌
🔴音声データ2(CD):詩的映像日誌「gozo's DOMUS」の声、音、歌
【構成】
第1部(フルカラー):gozo's DOMUS
#1(23 APR 2020)〜#82(11 NOV 2021)/写真図版多数収録
第2部(モノクロ):次の方々の論考。石田尚志[画家・映像作家/多摩美術大学教授]、今福龍太[人類学者/東京外国語大学名誉教授]、木口直子[田端文士村記念館研究員]、建畠晢[詩人・美術評論家/埼玉県立近代美術館館長]、藪前知子[東京都現代美術館学芸員]、吉成秀夫[書肆吉成代表](五十音順)
【発行日】2024年3月7日
【本体価格】18,000円
【限定部数】499部
【判型】菊判(縦225mm×横150mm)
【造本】上製、本表紙レインボー箔押し、コデックス装、天アンカット、シュリンク包装、DVD1枚+CD2枚付
【予定頁数】248頁(カラー184頁/モノクロ64頁)
DOMUS X(エックス) 書物の穹窿(きゅうりゅう)吉増剛造 |
”懐かしい、すぐ傍(そば)の昔が。”ふと漏れたこの小声は、久しぶりの嬉しい古書メールマガジンさんからのご依頼をよろこぶ心と、古本、古書がそっと漏らした小声であったのかも知れなかった。しかしながら『DOMUS X(ドムス・エックス)』は、”本ならざる本”=”木ならざる木”これもすこし変わった小声なのだ。”本ならざる本”=”木ならざる木”から、そう”家ならざる家”といい替えることも出来るのではないのだろうか。 コトニ社の後藤亨真氏、書肆吉成の吉成秀夫氏、田端文士村の木口直子さん、そうして剛造とマリリアさんが、”家ならざる家”の家族なのだが、もうおひとり、その”お家(うち)”の天上に、幻の大樹が光に戦(そよ)ぐ美しい枝葉を揺らしていて、その幻の大樹がオーケストラの指揮者の役目を果たされた、装幀家宗利淳一氏である。 DOMUS(ラテン語の家)と名づけたのはマリリアさんだった。X(えっくす)は剛造。卓越した技術の図書印刷さん、澁谷さんと岩瀬さんにも深謝を。 小文を綴りはじめてからもう十日か二週間、立ちどまり考えても考えても、DOMUS X(エックス)の樹下に辿りつかない。おそらく、しばらく考えていて、気がついていた。この”辿りつかなさ”は、日記性にあったのではないのだろうか。誰もなし得ないような「日記性」に、……。勿論、毎週木曜日に発信するので、ポルトガル語でQuinte-feiraキンタフェーラと名付けているのですが、ここにおそらく”誰も知らない日記性”が、隠れて胚胎していたのかも知れなかった。考えてみると、写真ご担当の木口直子さんとの出逢いが、その”めばえ”に似ていた。芥川龍之介展ご担当の木口さんの写真の切り出し=瞬間の別の切り口をみる眼に驚いたときの、そのときとの出逢いも、この”誰も知らない日記性”にあったのかも知れませんでした。後藤さんとも吉成さんとも。地縁もあるいは、この日記性とつながっている。札幌あるいは札幌大学が縁だった……。とすると故山口昌男氏、この大学者の俤も、このDOMUS X(エックス)の背景にはっきりとうかびあがってくる。そして吉成、後藤氏の師でもある今福龍太氏の姿と心もまた、……。あるいはサンパウロに立つ、ガローアという霧もまた、……。地縁、風土性を、”誰も知らない日記性”に倣(なら)っていい変えてみると、少し飛躍してですが”心の周波数性=soul’s frequency”と名付けることも叶う。そう、つまり、”家なき家”の”スタッフならざるスタッフ”は、何処にもないような放送局=stationを創ろうとしたのだった。カソリックのstation dayは金曜日なのだが、……。 ”編集なき編集”とくにこれはコトニ社後藤亨真氏、書肆吉成の吉成秀夫氏のお心を憶測、推量してのことなのだけれども、折しもコロナ禍のさなかにあって両氏のお心の底に、”編集の潮目”といったらよいのか、発生状態への模索への意志があったのではなかったのだろうか。”コンピュータ難民”というよりも、”盲目的な発信者/剛造”を、その”潮目の渦潮……”に晒すという決断があったらしい。そして、優れた指揮者、枝葉を揺らすひと、宗利淳一氏も後藤亨真氏も想像をしなかった筈の”書物ならざる書物”が2024.3.7.に誕生することとなった。不知の未来の現在である、とわたくしは想う。 わが親友(とも)にして、後藤、吉成両氏の師でもある今福龍太氏は刊行寸前の2024.3.1(受信)に、次のような驚異のVisionを伝えて来てくれた。”DOMUSはドームDome 半円球の涯てなき天球なのだ”と。この刹奈、DOMUSは小さなそして巨きな天球宇宙となったのだった。その天球の歌手Marylyaさんのご挨拶をここに。 ”懐かしい、すぐ傍(そば)の昔が”冒頭でふと漏れたこの小声は、穹窿(きゅうりゅう)の何処に居るのか、黄金虫(こがねむし)か、蜻蛉(せいれい)の親たし気な小声だったのか知れなかった。 |
2024年3月21日木曜日
書籍 : 鳥居昌三-火の装置
火の装置 献呈署名入/鳥居昌三 北園克衛装/プレス・ビブリオマーヌ